オウンドメディアの立ち上げ、運営で必要不可欠な「校正」と「校閲」について

 2020.04.15  Marketing Intelligence

「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」というテレビドラマが高視聴率だそうです。今回は「校閲(こうえつ)」をテーマにした記事ですが、流行っているこのドラマの影響を受けてという訳ではありません。

取り上げる理由は、コンテンツマーケティングやインバウンドマーケティングを行う多くの企業や組織においてオウンドメディアの運営がメジャーな業務の一つになったからです。そしてマーケッターにとってはあまり縁のなかったであろう校閲の重要性も高まって来ました。 

今回は校閲に関してご紹介いたします。校閲とは何か、企業がオウンドメディアを立ち上げて運用する際に校閲に関してどう取り組んでいくのかを考えてみたいと思います。また、紙媒体では当たり前のように取り組まれてきた校閲をSEOの視点でも見ていきましょう。

校閲とは 

事実関係のチェック

まず、次の文章を読んでみてください。 

2016年3月に、ついに北海道新幹線が開業しました。

これにより北は北海道、西は鹿児島まで新幹線が通る事になりました。

全国津々浦々まで新幹線が走っているのは、夢のような出来事と言えるでしょう。

ライターがこの文章を入稿して来たとします。

書き手にほぼ丸投げ状態ならば、このまま掲載されるかもしれません。

しかしこの文章に対して「ちょっと待った」と物言いが入る可能性があります。

『全国津々浦々まで新幹線が走っている』

この部分がしっくりきません。事実と反する可能性があります。

津々浦々を辞書で調べると、津は港を意味し、浦は入り江や海岸を意味しているそうです。至るところの港や海岸のことで、全国の至るところという意味です。

新幹線が通っていない都道府県もあります。ですからこの文章は事実と違っているのです。

このように「事実関係のチェック」が校閲の範囲です。

校正と校閲の違い

では、広く知られる「校正」と「校閲」はどう違うのでしょうか。

校閲に比べ、校正は非常にメジャーな用語です。また、この二つは良く比較されますので、ここで整理しておきましょう。

校正

文字の誤り、脱字などをチェックする事。

校閲

文章の矛盾や、事実関係の間違いがないかをチェックする事。

出版社など文章を世の中に送り出す専門的な業種の場合には、この校正と校閲の専門家がしっかりと文章をチェックしますが、一般的な企業においては校正と校閲を一緒に行う事が多いようです。

校正と校閲の大切さ

記事の公開前のチェックは非常に大切です。

例えば校正について、私がまだ仕事を始めた頃は、事例を引き合いに上司に注意喚起されたことを思い出します。

あるスーパーのチラシで一玉100円でキャベツを売る事になった。ところが校正ミスで、実際のチラシに掲載されたのは一玉10円。スーパーはこの値段で売らないといけなくなり大赤字になった。

たった一文字を間違えてしまったばかりに、大きな損をする(させてしまう)という事例です。

修正のできない紙媒体が主な時代においては、このような教訓を頻繁に説かれていました。しかしWebメディアが確立していくと修正が容易である事から、後で修正すればなんとかなるという風潮があり、校正や校閲をおろそかにしてしまう危険性がでてきているようです。

一方、校閲の方はどうでしょうか。

こちらは文章の矛盾や事実関係をチェックするという作業ですから、校正よりも範囲的には大きい気がします。

ただし文章に矛盾があり違和感を感じつつも、細かな流れや表現に注視している一般の読み手は、そう多くはないでしょう。Webは紙と違い流し読みされる事も多いので余計ひっかかりは少ないかもしれません。

また事実関係についても、その情報を知らないから読んでいる人が多いため、間違っているかどうかの判断ができません。

つまり誤字脱字などの校正よりも校閲の有無は気付かれにくいかもしれないわけです。しかし、ひとたび情報の間違いが判明した場合は、一気にその企業の信頼が崩れてしまいます。

正しい情報、ユーザーの課題を解決する情報をオウンドメディアに掲載していくわけですから内容のチェックを怠るべきではありません。

校正・校閲漏れの文章に対する読み手の印象

校正や校閲漏れは読み手の印象にも多大な影響を与えます。

導入事例:ネスレ日本株式会社
導入事例:KDDI株式会社

例えば、次のような文章を読んでどう感じるでしょうか?

私たちが美術館に着いたのは、17時頃でした。入館は本来17時までだったのですが、私たちが遠方からその絵を見るためだけにやって来たことを伝えると、係の人は「特別だよ」と入れて暮れました。

ちょっといい話のはずですが、
一番最後に単純な文字の変換ミスがあるため、読み手の気分が萎えるでしょう。
(×入れて暮れました→○入れてくれました)

校正ミスによる誤字、脱字は、このように読み手の印象も大きく損ねる可能性があります。

文章全体に違和感を感じた方もいるかもしれません。

到着が17時で最終入館時刻が17時であれば、ギリギリ間に合っているのではないかと考える読者もいるでしょう。

読み手によっては、この美術館は杓子定規で不親切な印象と捉える人もいるかもしれません。校閲がきちんとされている場合は「17時頃なのか、17時を完全に過ぎていたのか」と指摘が入るはずです。

オウンドメディアとの関係 

ネットメディアは緩いのか

それでは本題となる、オウンドメディアでの校閲に対する取り組みについて考えていきましょう。

まず実際の現場で、校閲がどう行われているかについてです。

紙の出版社や新聞社には、校閲の専門部署や専門要員が存在します。そこでは厳しいチェックが行われています。ただしこれは大手での話で会社の規模によって校閲者の存在はまちまちになってきます。

これに比較してネットメディアですが、一般にはチェックが緩い印象があります。実際に大手メディアが提供するネット記事でも、誤字、脱字があります。また矛盾や違和感がある文章には、結構な確率で出くわします。エンタメ系の記事などは、かなり事実誤認ぽいものがまかり通っている印象さえ受けます。歴史が浅い分、ネットメディアは校正や校閲への取り組みは緩いようです。

ネットメディアは紙のメディアより素早く出す必要がありますから、自ずと一つ一つの記事を吟味していく時間が無い、というのが理由の一つでしょう。

また校閲専門の部署や担当者の割合も、少ないようです。もちろんメディアは情報が命ですからチェックは行いますが、編集者が校閲まで対応する、という形が取られたりしています。さらに一旦出てしまったものにチェックが入り、慌てて掲載を落とすといったケースもあります。このあたりは、紙のメディアでは不可能な対応の仕方です。

このように紙、ネットに関わらず体制や対応方法は媒体社によりケースバイケースですが、言えるのはネットメディアは紙のメディアほどは校閲に十分な体制が取れていないという事です。

専門の媒体社でさえそうした傾向があるのですから、本来メディアでない企業のオウンドメディアはどのように取り組めば良いのでしょうか。

企業はオウンドメディア運営にどう取り組むべきか

企業のオウンドメディアに関して、実は編集体制の課題が浮かび上がっています。

一般企業であっても対外的に情報を発信するメディアの運営ですから、たとえ小さなブログであっても編集体制が必要になります。

しかし、オウンドメディアのために一般企業が編集専門の部署を作る事はまずありえません。

2015年の中頃から一般企業がマーケティング部門で編集経験者を募集するというケースは、時折聞きました。しかし大抵はWeb担当者が兼務、良くて専任の編集担当者1人、さらに恵まれていても2人まで、といった所ではないでしょうか。

そのようなケースで多く見受けられるのは、内容を精査しないで校正だけ、つまり誤字脱字だけチェックして公開するパターンです。コンテンツは質が重要であるのにこれは問題になりかねません。

企業はコンテンツの質を確保する必要がありますから執筆者に依存すると言っても過言ではありません。

記事の執筆は「外部のライターにお願いするケース」と「社内の有識者にお願いするケース」の2つが考えられます。マーケティング組織に製品マーケティングや専門ライターが存在する場合にはマーケティング部内でライターを確保できるケースもあるでしょう。

外部にお願いするケースの場合、文章の内容はライターに丸投げ、といった形でチェックせずに出してしまうと、ユーザーの信頼を損ねてしまう危険性があります。

社内にお願いする場合でもエンジニアに書いてもらうと内容としては非常に厳密に書かれていますが、難しすぎて一般的な読者には到底理解できない文章がでてくる可能性もあります。

オウンドメディアの運営者として、このような記事には校正だけではなく校閲も必須といえるでしょう。

HubSpot社のイベントで深く共感した記憶があります。これからのマーケッターはパブリッシャーである必要があると言っていました。単なるイベントや広告などの運営だけでなくオウンドメディアの運営においても専門性と戦略が必要不可欠なのでしょう。

SEOへの貢献について 

校閲に力を入れる事は、SEOでもメリットがあるのでしょうか?

最初に結論を書くとSEOに期待して取り組むべきではないでしょう。

理由は、大きく二つです。

1. Googleは検索で表示させたページの正確性を保証していない。

実際に検索エンジンのアルゴリズムが進化しても、情報の正確性を判断するのは困難でしょう。 

残念なことにSEOだけを意識して、内容の信憑性もなく記事を大量に投入するようなメディアも見受けられます。

2. オーソリティサイトを上位表示する、という説に期待し過ぎない。

「オーソリティサイト(権威性のあるサイト)」や「E-A-T(専門性・権威性・信頼性)」が検索上位の要因になる、ならないという議論は数年前からあります。しかし、ハッキリしない情報です。Googleが試している施策の一つ程度に捉えた方が良いでしょう。 

このように現段階においてGoogleはコンテンツそのものの正確性、信頼性を完全に判断はできません。

ですから文章を緻密にチェックしての校閲が即、SEO対策の一環とはなりません。

しかしGoogleは、評価が高い、あるいは多くのユーザーが繰り返し利用しているといった判断基準で、なるべく正確で、信頼度の高いページを上位表示させようとしています。

オウンドメディア運営者による緻密な校閲そのものが直接影響する訳ではありませんがユーザーの行動を通して、その努力はきっと報われるはずです。

オウンドメディア運営を成功させるには

これまで校正・校閲の重要性に関してご紹介してきました。

リードプラスではオウンドメディア運営をサービスとして提供しているため様々なケースに出くわします。その中での知見をご紹介します。(弊社のお客様はIT系が多いため、偏る可能性がありますことをあらかじめお伝えしておきます)

パターン1:Webマーケッター編

あるお客様ではオウンドメディアを立ち上げる際にWebマーケティング専門の人材をオウンドメディア立ち上げと運営にアサインしました。1名です。SEOを意識してキーワード設計を行い、そのキーワードをもとに外部のライターに発注しました。月にだいたい30本程度の記事を公開しました。校正は行うものの校閲はあっさりとしたものです。

結果、短期間でページビューはうなぎのぼりです。しかし、リピーターは少なくコンバージョンしても営業活動には結び付きづらいという結果を得ました。Webマーケティング専門の人材であったためページビューやセッション数、直帰率などを常に意識していました。また、オンラインの広告にも相当額を投資しました。しかし、営業からは喜ばれていないケースの象徴と言えたケースです。

このことから得た教訓は、旧態依然のWebマーケッターはGoogle Analyticsだよりになりがちです。やはりインバウンドマーケティングの設計を行うだけでなく、ユーザーの課題に対するしっかりとした信頼性のあるコンテンツを投入するべきなのです。

パターン2:Webデザイナー編

あるお客様ではオウンドメディアを立ち上げる際に営業推進を行っていた女性をアサインしました。もともと営業用のカタログやチラシ、営業からの依頼によるセミナーハンドリングを行っていた方でしたので、デザインには非常に凝ります。企業のブランドイメージなどを忠実にWebで再現することは決して悪いことではありません。しかし、紙媒体のデザインをWebで忠実に再現しようとするがあまりコンテンツには目がいきません。たしかにデザインは重要ですが、見た目よりもインバウンドマーケティング志向のデザインが重要だったりします。

関連資料:サイト流入/見込み客/売上を伸ばすための25のWebサイト必須項目

そしてコンテンツは、社内のSEやサポートの人材が記事を執筆し、CMSに直接アップする手法をとりました。校正・校閲は書き手まかせです。記事は月に10本程度公開しています。

結果、書き手ごとに文章の質や量ともにばらつきがあり非常に読みずらいものになりました。そして基本的なコンテンツマーケティングのお作法もないためビューも稼げずにいました。

パターン3:プロダクトマーケッター編

あるお客様ではオウンドメディアを立ち上げる際に製品マーケティング担当者をアサインしました。自社製品や戦略、外的な環境などを理解している人材です。もともとプリセールス経験者であるためお客様の課題も理解している方です。

最初にインバウンドマーケティングを理解していただき、ペルソナ設計やジャーニー設計などをしっかりと時間を割いて行いました。一つの記事に対して数時間確実に校閲の時間をとり記事を公開していきました。一本公開するのに多くの時間を割きました。月に多くて4本程度の公開でした。

記事の内容は素晴らしいのですが記事本数が少ないために当初はなかなか訪問者もいませんでした。しかし、コツコツと数年積み上げたことで今では月に数百件のコンバージョンを稼ぎ、さらには売り上げにも貢献しています。このことから記事の内容が最も重要であると結論づけられました。

3つの事例をご紹介しました。
どのような人材が良くてどのような人材が悪いという話ではありません。

しっかりとインバウンドマーケティングを理解し質の高い記事が成功への近道になります。

上記3社は、その後、修正を加えて今ではオウンドメディアの運営を成功させています。

まとめ

多くの企業や組織においてオウンドメディアの人材が少ない状況に変わりはありません。しかし、校正・校閲は必要不可欠な作業であると同時にインバウンドマーケティングを成功させるうえで最も重要であると言っても過言ではありません。

小手先のSEO対策やWebマーケティングでは通用しなくなってきている状況において、やはり本質を着実にこなしていくことがオウンドメディア成功への近道と言えるのではないでしょうか。

追伸:
弊社のブログも誤字脱字が多く偉そうなことは言えませんね。m(_ _)m。頑張ります。

[PDCA]導入事例:ネスレ日本株式会社

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