Googleなどの検索エンジンのアルゴリズムは、高度に進歩しています。
それは、SEO業界で名だたるコンサルタントの面々が、「一筋縄にはいかない」と口を揃えるほど。中には冗談混じりながら、「もう、SEOコンサルは辞めたい」、というセリフまで飛び出すのが現実です。
さて、そうした一流の方たちは誰もが知るグローバル企業や大規模サイトを多く手掛け、非常に緻密な対策が日々行われています。
一方で中小規模のサイト(中小企業のコーポレートサイトなども含む)では、まだ基礎的な対策が十分にできていない所も多く、そこをきちんとする事を心掛けた方が良いと言います。
では、実際に基本的な対策はどの程度行われているのか。またそれが、検索順位にどれほど影響を与えているのか。
これらについて複数のキーワードで調べてみて、検証をしていきたいと思います。
SEOの基本
最初に、ここで検証する内容について整理をしておきましょう。
まずは効果が高いとされるSEOの基本を、復習しておきます。そして次に、ここでの検証方法について説明していきます。
Googleが基本として提示しているガイド
GoogleはSEOの基本として、「検索エンジン最適化スターターガイド」を公開しています。
表紙を含め32ページに及ぶドキュメントです。
ただしもともと社内用に作成したもの、またGoogle特有の言い回しもあるために、これをそのまま読むだけではポイントが掴めません。
そこで過去からのSEO対策で実際に効果的とされた項目について、ピックアップしていきます。
項目のピックアップ
meta情報
- titleタグ
- descriptionタグ
meta情報の「title」「description」は、検索結果ページ(SERP)の表示にも使われ、検索順位を上げるのにも重要、と言われました。
それぞれに対策するキーワードを入れ、titleは30字前後、descriptionは120字前後が適切な文字数とされていました。
見出しタグ
- h1
- h2
html内で見出しを示す、h1~h6という見出しタグにキーワードが入っている事も、重視されました。
大見出しのh1に入れるのが望ましいとされますが、社名とセットでサイト全体のキーワードを入れる事も多くあります。そのため、個々のページでの対策ワードはh2の方にだけ含めるという場合もあります。
ページ内のSEOワード比率
クローラーに認識してもらうためには、キーワードがそのページ内で実際に使われている事が、大前提になります。
ページ内の全テキストに対して、極端に比率が高いのは逆効果で、ページ内で3~5パーセント程度が効果的とされていました。
ページの読み込み速度
ユーザーにストレスなくページを表示させる事も、強く推奨されています。
ドメイン年齢
検索エンジンはドメインの取得からの経過年数で、サイトの信頼性を見るとされています。
被リンク数
「被リンクはもう効果がない」、というのは間違いです。
効果が出ない、ペナルティまで食らってしまうというのは、有料リンクの購入や質の悪いページから大量のリンクを貼っているといった、不正な対策を行っている場合です。
ソーシャルメディア
- Google+
「検索エンジン最適化スターターガイド」では、ソーシャルメディアについても触れられています。
ただし、ソーシャルメディアからのリンクはnofollowもあるので、被リンクを増やす施策とは一緒にしないようにしましょう。
ここでは、計測しやすい二つのSNS上での評判を調べました。
検証方法と結果
ではこうしたGoogleの基本要素を、どういった検証方法で見ていくかを提示しておきましょう。
まずは中規模サイトに絞るため、対象とする業界を定めます。
- グローバル、有名企業が多く存在する業界は除く(そこが検索上位を占める可能性があるため)。
- 数兆円規模の業界を除く。
- 上の二つを踏まえた、市場規模1兆円未満~1,000億円内の業界で、それほどニッチではないもの(ニッチだと、Web自体に力を入れていない可能性があるため)。
また検証方法ですが、次のような形にします。
- 対象サイトは、企業が運営するサイト(個人運営や情報サイトは除く)。
- ただし、企業運営であっても第三者コンテンツ的なオウンドメディアは除く。
- 上の条件で、自然検索結果の1~5位までの中から1ページ(サイト)をピックアップ。(「1ページ目の上位」)
- 同じく、自然検索結果の6~10位までの中から1ページ(サイト)をピックアップ。(「1ページ目の下位」)
- 比較対象として、3ページ目(21~30位)までの中から1ページ(サイト)をピックアップ。(「3ページ目」)
- 今回は、パソコンでの検索結果のみで検証。
これらの条件で、1.2でピックアップした、「SEOの基本的な項目」について検証していきます。
エステ
まずはエステ業界からです。
「二の腕 脂肪吸引」という複合ワードで検索してみました。
1ページ目に表示されたのは、次の二つです。
◎(二重丸)は、両方の検索語が入っているという事を指します。
meta情報や見出しなど、良好な結果となっています。
次に、3ページ目の分です。
こちらも、各項目は1ページ目に表示のものと遜色が無いレベルとなっています。
強いて気になる箇所を挙げれば、descriptionの文字数が極端に少ない事と、ページ内のSEOワード比率がやや高いといったところでしょうか。
しかし、ドメイン年数で言えば1ページ目の下位よりもむしろ優れています。
語学スクール
次に、語学スクールについて見ていきましょう。
「英語 スクール」で検索してみました。
○(一重丸)が多いですが、実際には「英会話」という言葉が入っています。
可能性として、Google側で「英語≒英会話」と解釈しているとも考えられます。同義語に関しては検索エンジン側での解釈が進んでいますので、キーワードとしてみなされている可能性が高くなります。
また1ページ目では、ドメイン年数や被リンク数で下位に表示された方が勝っているのも注目ポイントです。
3ページ目に出てきたページも、各項目はほぼ満たされています。
ドメイン年数が比較的新しいですが、1ページ目の上位の方が取得年数としては短かったので、これが決定的な違いを生んでいるとは考えにくそうです。
通販(エクステリア)
次に、通販系のサイトを見ていきましょう。
対象とするのは、今回の前提となる業界規模に合わせたエクステリアです。
「エクステリア 通販」で検索した結果は、次のようになります。
上位表示の方のdescriptionには、「通販」という言葉は入っていませんが、「ネットショップ」という言葉は入っていました。
これが「通販」と同義の言葉として完全に解釈されているかは微妙な所で、キーワードの選び方で頭を悩ますのはこういった部分になります。
同じ事は下位の方にも言えて、こちらはtitleに「通販」という言葉がなく、「オンラインショップ」となっていました。
この二つを比較すると、ページの読み込みスピードやドメイン年数、被リンク数は下位の方が勝っているのにも注目です。
さて、「エクステリア 通販」での検索は、meta情報、見出しタグ、ページの読み込み速度で、3ページの方が比較的良い結果になりました。
気になる点を挙げるとすれば、titleとdescriptionの文字数が極端に長めという事でしょうか。
BtoB
BtoBという事で、業務用の商品について検索してみました。
キーワードは「業務用 冷蔵庫」です。
これもそつなく、主要な項目を押さえたページが上位に出てきました。
BtoB向け商材ですが、二つとも通販系のサイトです。
下位に表示されたものについては、titleタグに「冷蔵庫」というキーワードが入っていませんでした。「厨房機器」というワードは入っていましたが、これを「冷蔵庫」と解釈するのは厳しいかもしれません。
両サイトとも、titleタグの文字数が多めなのは気になる所です。
3ページ目に表示されたものですが、こちらは通販サイトではなく、業務用冷蔵庫の販売を行う会社の、コーポレートサイトになります。
ただし各項目については、1ページ目に表示された上位の方と比べても遜色ありません。
検証結果からの考察
それでは今回見えてきた事柄について、整理していきましょう。
結果から見えてきたポイント
まずは検証結果から、重要と思われる点をピックアップしていきます。
- meta情報のtitle、descriptionについては1ページ目のサイトはもちろん、3ページ目に表示されたWebページでもほぼできていた。
- かつてはtitle、description共に文字数の目安を守るのが大切、と言われた。しかし実際に見ていくと文字数はバラバラで、そこで大きな影響が出ているようには思えない。
- その他の要素も、たとえ3ページ目であっても大幅に項目にもれがあるという事はない。むしろ、1ページ目に表示されたWebページよりもできているモノもあった。
- ソーシャルメディアについては、あまり取り組まれていないように見える。
所感
今回見えてきた項目をピックアップしてみましたが、次の2点がわかったのではないでしょうか。
- 「中規模サイト(あるいは中規模企業のサイト)では、まだまだSEOの基本的な対策が取られていない」と言うが、実際にはできているWebページが目立つ。
- SEOの基本的な要素については、それだけで大きく検索順位に影響を与えているようには見えない。
この二つをまとめると、次のような事が言えそうです。
「こうした基本のSEO対策は、今や中規模サイトでも行っていて当たり前。しかし、それだけで検索順位に大きな差が出る訳ではない」
実際にGoogle側は、被リンクやtitleタグの効果について聞かれると、次のように回答をする事があります。
「Googleが検索順位を決めるアルゴリズムは200以上あります。被リンクやtitleタグといったものは、そのうちの一つに過ぎません」
つまり、200の中の10個程度をやっても、それだけで検索順位は上がりませんよ、という訳です。
実際に今回掲載はしませんでしたが、サイトとして404エラーに適切な対処をするのもSEOの主要項目ですが、metaや見出しタグがほぼ完璧なのに比べ、それが対策されていないものはいくつかありました。
このように、meta情報や被リンクといった比較的有名な取り組みはできているものの、まだまだ実施されていない対応も多くありそうです。
なおGoogleは最近、機械学習もアルゴリズムに取り入れています。
今回検証した中で、「業務用 冷蔵庫」という検索ワードだけでは、ユーザーがどういった答えを求めて、この言葉で検索しているのかは見えてきません。
しかし通販系のサイトが上位に来ているという事は、検索エンジン側が「こうした言葉で検索された場合は、通販のニーズが高い」と学び、その結果を上位で返している可能性もあります。
このように200以上あると言われるアルゴリズムは、さらに数を増やしています。
meta情報や被リンクが効かなくなったのではなく、アルゴリズムの構成要素が増えたために、相対的に一つ一つの価値が下がったと解釈する方が良いでしょう。
基本的な取り組みをしておくのは当たり前、新たなアルゴリズムも見据えた取り組みが、今のSEOには求められます。
まとめ
今回はごく一部の業界の、わずかなサイトだけを検証したに過ぎません。
しかし、これまでの効果を発揮していたSEOの取り組みだけでは、検索順位に大きなインパクトが出ない事は実感できたと思います。
また検索結果を返すという機能だけでなく、Googleは自然検索の上に基本的な情報を表示させる仕組み(ナレッジグラフ)、地域によって検索結果を変える(ヴェニスアップデート)など、さまざまな改良を重ねています。
数年前のSEO対策と現在は大きく違う、という事を今回の考察から感じて頂き、さらに検索エンジンの進化を日々追っていってもらえればと思います。
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