日々のビジネスの中で「顧客ロイヤルティ(Customer Loyalty)」という言葉を耳にしたことのある方は多いでしょう。ロイヤルティ(Loyalty)とは日本語で「忠誠心」を示す言葉で、転じてユーザー・顧客が企業やブランド、商品やサービスに対して感じる信頼や愛着を表しています。今回は、その概要と測定方法についてご紹介します。

顧客ロイヤルティはなぜ重要なのか?
現代のビジネスにおいて顧客ロイヤルティが重視されている理由とは何か?その答えを示してくれたがの、2015年にEmotion Techが実施したNPS調査です。この調査によると、顧客ロイヤルティが高いユーザー・顧客には次のような傾向が確認されています。
1. リピート率の向上と解約率の低下
ECサイトの年間平均利用回数において、顧客ロイヤルティが高い顧客は17回近く利用していたのに対し、顧客ロイヤルティが低い顧客は9回程度にとどまっています。言い換えれば、顧客ロイヤルティを引き上げることで利用回数を90%も高められることを意味しています。また、会員制サービスやサービス型のモデルでは解約率低下にも提供があります。
2. 顧客単価の向上
とあるアパレルブランドでの調査を実施したところ、年間の平均購入額に顧客ロイヤルティが大きく関与することが判明しています。顧客ロイヤルティが高い顧客は、低い顧客と比較して1.3倍も購入金額が大きいというのです。つまり、顧客ロイヤルティを高めることで購買単価を、ひいては売上を向上させることに繋がります。
3. 口コミによる拡散力向上
ブランド、商品やサービスに対して不満を持っている顧客は、それらに対する悪い評判を広める一方、顧客ロイヤルティが高い顧客は周囲に積極的に推奨してくれます。つまり、口コミによる情報拡散力の向上です。とあるスポーツメーカーでは、顧客ロイヤルティが高い顧客の85%がその商品を他者に勧めた経験があり、新顧客獲得において非常に大きな役割を担っていると言えます。
出典:Emotion Tech『【ブランド戦略】顧客ロイヤルティとは?顧客を引き付けるマーケティング手法』
「心理面」と「行動面」、2つに分けた顧客ロイヤルティ
顧客ロイヤルティは2つの要素に分けて考えることが大切です。
それが、「心理面ロイヤルティ」と「行動面ロイヤルティ」です。前者は企業・ブランド・商品に対して抱くプラスの感情、後者は企業の商品やサービスを継続的に購入する行動です。
注意しなければいけないのは、「心理面ロイヤルティが高ければ行動面ロイヤルティも高い(あるいはその反対)」と考えてしまうことです。実は、心理面ロイヤルティと行動面ロイヤルティは、4つのマトリクスとして考える必要があります。
行動面ロイヤルティ |
|||
---|---|---|---|
高い |
低い |
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心理面ロイヤルティ |
高い |
企業、ブランドにとっての最重要顧客となる層であり、最も充実した対応を進めるべきユーザー・顧客。 |
憧れの高級腕時計などがこのケースに当てはまる。特定のブランドや商品に対して強い愛着はあるものの、金銭面など何らかの理由によって購入することが難しいユーザー・顧客。 |
低い |
「家から最寄りのコンビニ」などが当てはまるケース。その添付に対する愛着は無いものの、家から近いという理由でほぼ毎日通っている。このケースでは店舗に対する好意的な口コミが生まれるようなことはなく、さらに近い場所に新しいコンビニが出店されればそちらに流れる可能性が高いユーザー・顧客。 |
他社のブランドに強い顧客ロイヤルティを感じている、自社ブランドを認知していないといったユーザー・顧客。 |
このように、心理面ロイヤルティと行動面ロイヤルティによって顧客ロイヤルティを4つのマトリクスで分類すると、一口に顧客ロイヤルティといっても複数のタイプがあることが分かります。従って、すべてのユーザー・顧客の顧客ロイヤルティを一様に高めようとするのではなく、ユーザー・顧客のセグメントをしっかりと把握した上で施策を展開していくことが大切です。
顧客ロイヤルティを測定するNPS
そもそもどうすれば顧客ロイヤルティを測定できるのか?ここでは、シンプルながらも信頼性の高い指標を算出できるNPS(Net Promoter Score:ネット・プロモーター・スコア)について解説します。
- ネットアンケート等を通じて、ユーザー・顧客に「この企業・ブランド・サービス・商品を周囲の家族や友人、ビジネス関係者に勧める可能性はどれくらいありますか?」と質問する。
- 勧める可能性を0~10の11段階で回答してもらう。
- 11段階評価のうち、9もしくは10と回答したユーザー・顧客を「推奨者」に分類する。
- 7もしくは8と回答したユーザー・顧客と「中立者」に分類する。
- 0~6と回答したユーザー・顧客を「批判者」に分類する。
- 回答者ぜんたいの推奨者の割合(%)から批判者の割合(%)を引いた数値をNPSとして算出する。
NPSは、2003年にアメリカの大手コンサルティング会社であるベイン・アンド・カンパニー社のフレドリック・F・ライクヘルド氏がハーバード・ビジネス・レビューで発表し、GE(ゼネラル・エレクトリック)やApple、LEGOなどさまざまな企業がその有効性を証明したことで普及した顧客ロイヤルティ指標です。
2017年9月にEmotion Techと日系BPコンサルティングが共同で実施した「自動車業界ロイヤルティ調査」によると、各企業のNPSと直近5年間(2012年~2016年)の国内販売台数年平均成長率の相関係数は0.88であり、非常に強い相関関係があることが分かりました。
出展:Emotion Tech『自動車業界ロイヤルティ調査レポートPart.1』
NPSを利用して顧客ロイヤルティを指標化すると、非常に信頼性の高い数値が算出できますのでぜひ実施してみてください。
最適な顧客ロイヤルティ向上施策を考える
顧客ロイヤルティを高めるための施策は実にさまざまです。大切なことは、自社のユーザー・顧客をしっかりとセグメントした上で、施策優先度の高い層に対して顧客ロイヤルティ向上に取り組むこと、自社ビジネスに即した施策を実施することです。これまで顧客ロイヤルティに関して注目してこなかった方、ぜひNPSを実施した自社の顧客ロイヤルティについて明らかにした上で、適切な向上施策に取り組んでみましょう。
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