皆さんは「マーケティング分析」にどのようなイメージをお持ちでしょうか?「難しそう」「専門家が必要」などなど、あまりポジティブではない印象を受ける方が多いかもしれません。しかし実際のマーケティング分析はもっと身近なものであり、自社の商品やサービスをより多く、そして効率的に売るために必要不可欠な戦略と言えます。
また、マーケティング分析とは「データ分析(あるいはビッグデータ分析)」という大きな括りの中にある1つの分野であり、昨今のデジタル領域においてはその手法も確立されつつあります。もちろんDatoramaなどのマーケティング分析のためのツールも存在感を示しています。
まずはマーケティング分析とは何かを知り、堅苦しいイメージを払拭して身近なものとして感じてみましょう。
身近なところに転がっているマーケティング事例
マーケティング分析について知る前に、まずは身近なマーケティングについてご紹介します。我々の概念や文化などはマーケティングによって生み出されているところも多く、古くから継承されてきたものと考えられている文化の中にも、近代的に生み出されたものがあります。その一つが「初詣」です。
これは驚きという方も多いでしょう。まさか年始の風物詩である初詣がマーケティング発端で定着した文化だと。今年1年の健勝を祈る際に、「江戸時代やそれ以前の人々もきっとこうやってお参りしていたのだな」と時代を遡りロマンを感じていた方もいるかもしれません。しかし実は、初詣は明治以降に広まった極めて新しい文化です。
そして初詣をマーケティングの一環として日本中に定着させたのが、当時の電鉄会社でした。元々はその家の長が祈願のために大晦日の夜から元日の朝にかけて氏神の社に籠る習慣であった「年籠り」が変化したものであり、電鉄会社が鉄道普及のために打ち出したマーケティングの一環でした。
明治時代初期まではその年の氏神、またはその年の恵方の方角にある社寺に詣るのが主流だったのですが、電鉄会社が沿線の神社仏閣を宣伝したことから、氏神や恵方に関係のなり神社仏閣へのお詣りが増えていったのです。ちなみに関東の京成電鉄やJR成田線(旧成田鉄道)は参拝客を輸送する目的で開業されたそうです。
この他にも「クリスマスにはケンタッキーフライドチキンを食べる」、「土曜の丑の日にはうなぎを食べる」、「婚約指輪はダイヤモンド」なども、関連企業が打ち出したマーケティングがきっかけになっています。
マーケティング分析とは何なのか?
身近なマーケティング事例について知ると、マーケティングを自分ごとのように考えることができますし、何より面白い事例がたくさんあるのでマーケティングへの興味が湧いてきます。そして、それらマーケティングの成功を支えているのが他でもないマーケティング分析です。では具体的にマーケティング分析とは何なのでしょうか?
冒頭で「商品やサービスをより多く、そして効率的に売るための戦略」と説明しました。しかしより厳密に言えば、マーケティング戦略を立てるにあたり仮説と検証を実行するために必要となる判断材料を揃える行動だと言えます。
「分析」と付くのですから当然データを用います。しかしそのデータは特別なものではなく、日々のビジネスで自然と生まれるような身近なものでも構いません。Web解析データ、広告データ、売上データ、販売データ、顧客データ、在庫データ、仕入れデータ、これらのデータを目的に応じて組み合わせたりして分析を行うことで、マーケティング戦略に欠かせない判断材料を揃えることができます。
例えば、「自社の商品やサービスを利用する人はどの年代に多いのか?」を調査するのもマーケティング分析の一つです。スーパーマーケットやコンビニエンスストアで使用されているPOSシステムの多くは商品を購入したお客様の性別や年齢を打ち込むためのキーがあります。これにより、男性・女性ごとのどの年代の人が何をよく購入しているかなどを自然と把握することになります。
これも立派なマーケティング分析であり、お客様や市場についての情報を得ることで新しいマーケティング戦略を打ち出し、商品やサービスをより多く、そして効率的に販売するための環境を整えていけるわけです。
マーケティング分析の基本
マーケティング分析の手法としては多種多様に存在します。その中には基本となるものがいくつかあり、本稿では「STP分析」についてご紹介します。
STP分析は「Segmentation(セグメンテーション)」「Targeting(ターゲティング)」「Positioning(ポジショニング)」の頭文字を取り、新しいビジネスを展開するにあたって市場やターゲット、販売する商品やサービス、そして企業そのものの市場における立ち位置などを理解するための分析手法です。では、項目ごとに具体的に何を分析するのかを解説します。
Segmentation(セグメンテーション)
自社の商品やサービスを購入して胃る顧客全体から類似したニーズを持つ顧客に分類し、マーケティング戦略におけるターゲットを明瞭にするための分析です。商品やサービスごとにターゲットが明確になっていない場合、マーケティング戦略が曖昧になってしまいます。その基礎として行うのがセグメンテーションです。具体的には以下のようなデータを分析します。
デモグラフィック
人口統計的なデータのこと。顧客の年齢、性別、家族校正、職業、役職など基本的に変化しない情報をもとに分類する。
ジオグラフィック
地理的データのこと。国、都道府県、市区町村、地域の気候・文化・宗教など地理的要因に絡む情報をもとに分類する。
サイコグラフィック
心理的データのこと。人の価値観、性格、ライフスタイル、商品やサービスの購入動機など個人の心理に関係する情報で分類する。
ビヘイビアル
行動的データのこと。商品やサービスを購入する頻度、買い替えのタイミング、用途など個人の行動に基づいた情報で分離する。
Targeting(ターゲティング)
広い市場の中から狙うべきターゲットを定めるために、セグメンテーションとセットで実行するのがターゲティングという分析です。セグメンテーションにて細分化した市場で、ターゲットを絞り込んでいきます。以下のようなパターンを用いることが多いでしょう。
無差別型ターゲティング
セグメンテーションで分類した市場の違いを無視して、同じ商品やサービスを全てのターゲットに供給する。
差別型ターゲティング
セグメンテーションで分類した市場に、それぞれのニーズに合致した商品やサービスを供給する。
集中型ターゲティング
ごく限られた市場に集中した商品やサービスを供給する。
Positioning(ポジショニング)
ポジショニングでは自社の商品やサービス、企業そのもの、顧客の分類などあらゆる面で競合他社と比較し、市場における自社のポジション等を明確にします。商品やサービスの価格、品質、店舗数、販売チャネルの数など競合他社と比較するための基準を持ち、その中から適切な指標を用いることが大切です。
マーケティング分析を始めてみよう
いかがでしょうか?「マーケティング分析はやっぱり難しそう」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、実際に取り組んでみるとマーケティング分析には楽しい面も多く、かつ慣れ親しむことでより高度な分析ができるようになります。まずは簡単な分析から始めて、自社の顧客や商品・サービスについて深く理解するためのきっかけを作ってみましょう。
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